作業環境測定機関 労働安全衛生コンサルタント事務所 専門家による石綿分析

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スマートフォン顕微鏡で観るアスベスト

  
1.はじめに
 アスベストは現実の大きな被害を発生させている発がん物質であり、建材に大量に使用されたために今でも身の回りに残されている。石綿含有建材を特定することは、リスクを把握する上で重要だが、建材等にアスベストが入っているかどうかの分析(定性分析)は通常は分析の技術者が行い、高価である。しかし石綿含有率が高い建材は、目視でも石綿繊維が確認できるものもある。安価で簡単な方法で石綿を特定することによって、労働者、建物使用者、住民がリスクを知ることができ、関心を高め対策を向上させることが期待される。アスベスト・リスクコミュニケーション・プロジェクトでは、最近性能の向上が著しいスマートフォンと安価な顕微鏡アタッチメントを使用して、アスベストを観察するワークショップを開催している。
 
2.方法
観察装置の作成
1)スマートフォン顕微鏡(学研「スマホDe顕微鏡」)を使用し、光源のガラスを外し、その上に偏光シートを取り付ける。偏光シートは接着シート付きの切り取り可能なものを使用。
2)レンズの上面に光源の偏光板の向きと直交するようにもう一枚の偏光シートを取り付ける。
※偏光板を使用する理由
石綿等の結晶構造を持つ物質は直交する偏光板で挟み透過光で観察することによって構造を観察することが容易になる。ロックールなどの結晶構造をもたない物質は見えにくくなる。偏光顕微鏡は1970年代から世界中で石綿分析に広く使用されている。
 

 
光源とレンズに偏光板を取り付けたスマートフォン顕微鏡
 
 
観察用試料の作成
  材料  スライドグラス、カバーグラス、透明な接着剤、石綿含有建材やロックウールなどの観察したい試料、ルーペ、ピンセット、防じんマスク。
1)スライドグラスに接着剤を1滴落とす。
2)ルーペで石綿含有建材を観察して、石綿繊維をピンセットで取り出す。防じんマスクを使用するか局所排気装置を使用すること。
3)繊維をピンセットで広げて、カバーグラスをかぶせる。
 

 今回作成した18種類の試料
 
3.観察 

石綿の微細な繊維が観察できた。
 

クリソタイル
 

アモサイト
 

トレモライト石綿
 

クロシドライト
 

バーミキュライト
 

ナイロン
 

ポリエチレン
 

ロックール
 

クリソタイル(上)とロックウール(下)、これは容易に区別できる。
 
 
クリソタイル(下の細い繊維)とセルロース(上)、微妙だが何とか区別できる。
 

 

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