作業環境測定機関 労働安全衛生コンサルタント事務所 専門家による石綿分析

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アスベスト・リスクコミュニケーション・プロジェクト

アスベストを知るワークショップ 各地で開催!

 


 センターが地球環境基金の助成金を受けて進めている「アスベスト・リスクコミュニケーション・プロジェクト」は2年目を迎え、各地でのワークショップを開催すると共に、実際の解体と石綿の除去の現場でのリスクコミュニケーションを実施しています。
 
 守口市でのワークショップ
 大阪府守口市では、旧市役所の解体工事での事前調査が不十分であることが住民から指摘され、説明会が開催され、現状では工事が止まっています。プロジェクトでは直接には市との交渉等には関わっていませんが、住民から要請を受けて、1月27日に守口市中部コミュニティセンターで「災害とアスベスト アスベストのリスクを知るための講演とワークショップ」を開催しました。司会は立命館大学の南慎二郎さん、主催者挨拶は中皮腫・じん肺・アスベストセンターの永倉冬史さんがおこないました。講演は、最初にセンターの外山尚紀が「アスベストとは何か?その危険性について」として、アスベストのもつ独特な特徴と強力な発がん性について解説し、次に永倉冬史さんから「築地でのアスベスト対策」として、築地旧市場の解体工事の現場で、永倉さんが中心となって進めているアスベスト除去時の検査について報告がありました。築地市場には大量のアスベスト含有建材が残されており、専門業者により除去工事が進められていますが、その安全性を確認するために、除去前の検査と除去後の検査に永倉さんが立ち会っています。詳しくはこの号の「 」を参照ください。講演の最後にセンターの外山が「震災とアスベスト」として、熊本地震、昨年の水害、北海道胆振東部地震での経験について講演しました。


 ワークショップは、愛知教育大学の榊原洋子さんが考案したスマートフォン顕微鏡を使用したアスベストの観察です。観察装置はスマートフォン顕微鏡(学研「スマホDe顕微鏡」)を使用し、偏光板で試料をはさむようにして観察します。観察試料は、石綿含有建材から取り出したアスベスト繊維をスライドグラスに透明な接着剤で固定したものです。偏光板を使用することがポイントで、アスベスト等の結晶構造を持つ物質は直交する偏光板で挟み透過光で観察することによって構造を観察することが容易になり、逆に石綿ではないロックールなどの結晶構造をもたない物質は見えにくくなります。こうすることによりアスベストの特徴である微細な繊維構造(石綿様構造)と他の繊維を区別することができます。偏光顕微鏡は1970年代から世界中で石綿分析に広く使用されています。参加者の皆さんも自分のスマーフォンに石綿の繊維が映し出され、写真を撮ることができました。参加者は28人でした。


 


豊田市でのワークショップ
 愛知県豊田市は、全国で最初に建築物石綿含有建材調査者協会(ASA)と「災害時のアスベスト調査協定」※を締結した自治体です。プロジェクトでは豊田市とASAの後援を得て、災害とアスベストに焦点をあてた講演とワークショップを2月7日に豊田市青少年センターで開催しました。司会は立命館大学の南慎二郎さん、主催者挨拶はセンターの飯田勝泰事務局長がおこないました。講演では、最初にセンターの外山がアスベストのリスクについて(前述)解説し、次に災害とアスベストをテーマとして熊本学園大学の中地重晴さんが、熊本地震とアスベストについて講演し、つづいて豊田市環境保全課の近藤理史さんから災害時のアスベスト含有建材調査のための協定の意義と締結の経緯について報告があり、ASA貴田晶子代表理事からは、昨年多発した水害や地震の自然災害後の石綿調査などのASAの活動について報告がありました。熊本地震後のアスベスト調査をモデルとして2017年に環境省が「災害時のアスベスト対策マニュアル」に災害後のアスベスト含有建材の専門家による調査を記載し、それによって災害時協定が実際に締結されており、多くの人の努力によって地域でのアスベスト対策が進められていることがわかりました。


 ワークショップは、前述の愛知教育大学の榊原洋子さんによるスマートフォン顕微鏡を使用したアスベストの観察を参加者の皆さんと行いました。今回は密閉容器に入れたアスベスト含有建材をルーペで観察することも行いました。参加者は30人でした。


 


堺市でのワークショップ
 大阪府堺市では、市が発注した北部地域整備事務所の煙突解体工事の際に、隣接する私立保育園にアスベスト断熱材を含むがれきを落下させ、アスベストを飛散させてしまうという事故を発生させています。原因は、市の職員が解体業者への連絡を怠ったこととされ、職員は大気汚染防止法違反容疑で書類送検されています。この問題については、地元住民、堺市の市議会議員と中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の堺市在住のメンバーなどが関わり、堺市でのアスベスト対策を進める取り組みが続けられています。そのような背景から、今回は堺市とセンターが共催で2月11日に「アスベストリスクを学ぶ学習会」を開催することになりました。司会は立命館大学の南慎二郎さん、主催者挨拶はセンターの飯田勝泰事務局長がおこないました。講演では、最初にセンターの外山がアスベストのリスクについて(前述)解説し、次に永倉冬史さんから、築地でのアスベスト対策(前述)について報告がありました。堺市からの報告では、危機管理課の福西広志さんから3部会から成るアスベスト対策推進本部による飛散防止、健康対策、啓発の取り組みについて説明がありました。質疑では、堺市の水深本部ついて、より実行力のある取り組みや対策を求める発言がありました。


 ワークショップは、前述の愛知教育大学の榊原洋子さんによるスマートフォン顕微鏡を使用したアスベストの観察を参加者の皆さんと行いました。参加者は60人でした。
 2年目のリスクコミュニケーションプロジェクトでは、各地の具体的な課題と関連しながら取り組みを進めることができました。築地の解体工事をはじめとして、まだ問題解決には至っていない課題が多く残されています。また、アスベスト規制の関連法規の改正も予定されています。3年目に向けて、取り組みの強化が必要です。


 
 
この催しは独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催しました。
 

 
 
 

 

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