作業環境測定機関 労働安全衛生コンサルタント事務所 専門家による石綿分析

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リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)の分析

 
1.RCFとは?
CF:Ceramic Fiber
アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)を主成分とした人造鉱物繊維の総称。(セラミックファイバー工業会)断熱、耐熱材等として広く利用。
 RCF:Refractory Ceramic Fiber
    非晶質、繊維径2〜4μm
 AF:アルミナ繊維 Almina Fiber
    結晶質、繊維径2〜5μm
 
 
 
2-1.RCFのリスク
鉱物繊維の発がんリスクは石綿の研究から明らかになった。
石綿:Asbestiformを持つ鉱物
 クリソタイル、アモサイト、クロシドライト、
 トレモライト、アクチノライト、アンソフィライト
 ウインチャイト、リヒテライト
 形態と発がんとの関係?
クリソタイル 石綿独特の形態(Asbestiform)が発がんを起こす。
 

 
2-2. 石綿様形態と発がんとの関係
 
事例1 ニューヨーク州タルク鉱山
 
   タルク鉱山労働者に肺がんが増加し、角閃石の曝露との関連が疑われた。
 
   最終的には肺がんと非石綿様形態の角閃石曝露との関連はなかった。
 
   YASUSHI HONDA, Mortality among Workers at a Talc Mining and Milling   FacilityAnn. occup. Hyg., Vol. 46, No. 7, pp. 575–585, 2002
 
   石綿様形態ではない角閃石の発がん性を否定
 
 
事例2 モンタナ州バーミキュライト鉱山
 
   1919年−1990年操業したバーミキュライト鉱山の労働者と周辺住民に肺がんなどが多発。石綿様形態の角閃石ウインチャイト/リヒテライトの曝露が原因とされる。
 
Patricia Sullivan, Vermiculite respiratory diseases and asbestos exposure in Libby cohort study, Environmental Health Perspectives, 115, 4, 579-585. 2007
 
   規制対象の石綿以外でも石綿様形態の角閃石は発がん性がある
 
事例3 産地の異なるトレモライトによる動物実験
 Asbestifrom の割合が多いほどガンの発生率が高い。

 
鉱物繊維の発がんリスクを決めるもの
1.形態
2.体内持続性
NIOSH Asbestos Fibers and Other Elongate Mineral Particles: State of the Science and Roadmap for Research 2011
 

 
写真のように石綿とRCFとは形態がかなり異なる。リスクは石綿>RCFと考えられる。
 
2-3.転機となったIARC(国際ガン研究機関)モノグラフ2002
 RCFについて
  疫学調査による発ガン性の証明:不十分
  動物実験による発ガン性の証明:十分
  Group 2B: ヒトに対して発がん性がある可能性がある。
 
 人造鉱物繊維のうちRCFと特殊用途グラスウールがグループ2Bとなったために世界的に対策がとられるようになった。

 石綿はグループ1(発がん物質)であり、RCFとは全く異なる。
 石綿は現実の非常に大きな被害を発生させている。
 
2-4.RCFの規制の始まり
 

厚生労働省は第2類特定化学物質として2015年から規制を開始。
 
3.RCFの分析方法
 

厚生労働省のパンフレットには詳細は記載されていない。
 
分析方法はどうすればいいのか?
RCFの以外の鉱物繊維が存在しない場合はPCM法で分析可能であり、石綿と比較して繊維が太いため分析は容易だが、下表の鉱物繊維が共存する場合は鑑別が必要となる場合がある。

 
ロックールと屈折率の違いを利用して鑑別する方法として
一般社団法人繊維状粒子研究会の提案する分析方法が示されている。
 これはJIS K 3850-1の灰化-位相差分散顕微鏡法と同様の方法論で、石綿を測定すると過小評価となるため、環境省アスベストモニタリングマニュアル第4.0版では採用されなかった。
 
環境省アスベストモニタリングマニュアル第4.0版「はじめに」には以下の記述がある。
「…今後は、クリソタイル以外のアスベスト繊維が使用されている可能性もある解体現場等が主な発生源となる。そのため、クリソタイルを中心とする従来の測定方法を見直し、位相差 顕微鏡法により総繊維の計数を行ったあと、比較的濃度が高い場合には電子顕微鏡法で確認 を行うこととし、場合によっては最初から電子顕微鏡で位相差顕微鏡法と同等のサイズのアスベストを計数することもできるように策定した。また、分散染色法については、微細なアスベストを精度良く計測しにくいということが判明したため、本マニュアルから除外した。…」
 
しかし、RCFは石綿と比較して繊維径が太いので適用できるかもしれない。検証した。
 
検証方法 位相差顕微鏡と位相差分散顕微鏡で同一視野を観察する方法
1)灰化試料を位相差顕微鏡観察して視野を決める。
2)視野を動かさずに対物レンズをずらし、浸液を滴下。
3)カバーグラスを載せて、位相差分散顕微鏡観察。
 
 
 石綿の場合はほとんどの繊維が分散職を示さず、大幅に過小評価となる。
 

 RCFの太い繊維は分散色を示す。

 RCFでも細い繊維(1μm程度以下)は分散色を示さない。
やはりRCFでも濃度を過小評価するおそれがある。
そのため、細い繊維が消えないことを以下の方法で確認する必要がある。





 
AF、石綿は結晶質であるため鑑別のためには偏光顕微鏡を利用できる。下の2枚の写真は同じ視野を見ているが、偏光顕微鏡(直交ニコル)ではRCFが消える。

 

 
AESウールと共存している場合はEDX付きの電子顕微鏡でなければ鑑別できないと考えられる。
 
4.まとめ
1)鉱物繊維の発がんリスクを理解することが重要。
2)RCFは「発がん性がある可能性がある」(IARC Group 2B).
3)作業環境測定の際には以下の点に留意。
    A)予備調査で対象と共存物質を確認する。
    B)共存物質とRCFの鑑別方法を選ぶ。
    C)灰化-分散染色法は要検証、使う場合は注意が必要。
    D)結晶質繊維との鑑別には偏光顕微鏡が使用できる。
  E)AESウールとの鑑別は難しい。
 
現在考えられる合理的な分析方法(私案)

 

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